卒業アルバムより


雪も降らず、海の気配もないここは
空が8cmほど近いそうだ
校旗が弱く恥ずかしげに垂れ下がる2時間目に
少し笑った
自転車のスタンドを上げる音や
列車の走る音に
時間の突き抜ける長さを感じた


経験が上から落ちてきて
知識が下から突き上げる
仕方がないので低血圧を喰らい
隙間から目覚まし時計を止める
冷え冷えの朝


何でも選んでいいと言われ
選ぶ力のない自分が
道の真ん中で膝を突き、崩れ落ちる
蒸し暑い夜


敗北感を感じようと努力しなくていい
十分負けている
戦わなくてはと身構えなくていい
十分、今、あがいている
何かを得ようと、なくそうとしなくていい
十分、今、得て、なくしている
間違いに大きな×印をつけ自分を罰しなくていい
そんなことは、しなくていい


時折目に入るわずかな誇らしさに
身体が熱くなってとまらない


終わるな、いや、終わってくれ
矛盾からしか生まれないこともある
そして
これから
目の後ろで泣き、骨の中で痛く痛くなりながら
空間を占め、何かを作っては落としてゆく
その背中は、哲学せずにはいられない
ちぎれるほど手を振る


その時、そこで、君は確実に生きていた。