Defiled

熱海殺人事件、広島に原爆を落とす日、Defiledと、2年ごとにここで書いていることになる。重い作品が好きな傾向はあるが、それ以上に重い役を背負う戸塚祥太が好きなのだろう。しかしそれでも、熱海と広島は、作品としての引力の圧倒的な強さにねじ伏せられ…

卒業の前に

ここが岐路か、と感じる。かつて過ぎ去ったいくつかの岐路ではまちがえた。それでもそのことに気づかなかったために後戻りすることも考えず、22歳から28歳まで苦しい年月を過ごした。東京で働きながらひとり暮らしをすること、それだけで精いっぱいだった。…

広島に原爆を落とす日

「広島に原爆を投下する」という方法で日本と恋人を愛したディープ山崎。わたしは初見でそれがすんなりと、何の抵抗もなく理解できてしまった。だからわたしにとってはこの作品はそれがすべてだった。語弊を恐れずに言うならば(というか、つか作品自体が語…

春を愛する人

突如郷愁に誘われて昔の曲を聴いていた。高校時代のわたしは春を愛する人が一番好きな曲って言ってたんだよなぁ。今思えば、その頃の自分は幸せだったんだな。今なら絶対言えない。 わりと好き勝手に生きてきて、今はずっとやりたかった勉強もできてるし、職…

世界で一番遠い場所

わたしは研究者だけど、本当に書きたいことなんてそんなにない。ただひとりの男の子のことを除いては。 17歳のとき、わたしは君にひとつだけ隠していることがあるよ、って実家の電話でコードレスじゃないコードをひっぱりながらいった。教えてよ、おれに隠し…

憲法

昔わたしのことを「微笑みの下でいつも何かに憤っている」と表現した人がいた。そのときはあんまりピンと来てなかったんだけど、今になってよくわかる。最近自分が不機嫌だったり怒ってたりするのをよく自覚するようになった。それは今の自分の環境がただ単…

スピラル

プロダクションノート、というほどのものではないけども。 すでに手にとってもらった方には、制作裏話的なものがあると楽しんでいただけるかなあと思って。 先日こちらの『SPIRAL スピラル』という小さい本を作りました。 発行所は「グラール堂」となってい…

熱海殺人事件3

人間の記憶の仕組み、ずっと中にしまっておくと薄れていって、外に出すと強化されるというのが謎で仕方がない。こぼれないように密閉してるほうが少しずつ薄れていくってなんでだよ!疑問があさってな方向へ向いています。 そういうわけで、熱海の話を。書い…

熱海殺人事件 2

殺しに至るまでがぼんやりとして曖昧で、 警察での尋問のシーンはくっきりとしている。 それは、劇場で観ているあいだのことを思い出すと輪郭がぼやけるけど、 その後の日常が細密になったような感覚と似てる。 わたしにとってはとつかくんのことを書くのが…

熱海殺人事件

のことで頭がいっぱいだ。しかし観劇直後はうまく言葉にならなくて、時間が経つとだんだん記憶が曖昧になってきて、何かを書いて残したいとは思いつつも、真っ白なテキストエディットを前に書けることなんて何もなくて絶望的な気持ちになった、という話をこ…

sans pause

「これほどエラーの多いスクリプトはないのに、何故か止まらずに走り続ける、それが人間の仕様だ」 フランスから日本に帰ってきたのは、去年の今日6月16日だった。にのみやの誕生日の翌日に出て行って、にのみやの誕生日の前日に帰ってきた。覚えやすい。一…

入学二ヶ月目

ゼミ発表も2回目を迎えた。今のところ、一ヶ月に一度くらいのペース。 こないだの発表がうまくいかなくて、終わってから静かにへこんだ。いや先生にはそんなに何か言われたわけではなくて、「M1の人はまだ発表の配分がわからないかもしれないけど、事実関係…

救済

今まで自分を支えてきたのは、無謀と髪一重の勇気だった。そのおかげでわたしは誰にも依存せずに生きられるようになったわけだけど、代わりに失ったものについて考えずにはいられない。わたしはいろんなことに鈍感になり、無痛になり、外部の影響を受けなく…

片思い

仕事しながら夜勉強するのは心身共に負担が大きくて、なんでこんな大変な思いしながらやってるんだろうなーとかときどき思う。でも、早く終わればいいっていうのはあんまりなくて、できることならもう少しじっくり勉強したいけど、今回は期日が決まってるか…

我執

美術の話を長文で書くのは楽しいんだけど、自分が今考えてることとかに文章で向き合うのを最近ちょっと避け気味だったので、10月一回も書いてなかった。反省じゃないけど、後々の自分は「こまめに書いてたほうの自分」を喜んでくれるので書いてたほうがいい…

弔い

弔いは生き残った者のためにある。その通りだと思う。葬儀もなく、ただ心の中で追悼するのは結構しんどいことだった。家族にも同僚にも心配かけないように努めてふつうに過ごしてるつもりだけれど、不意に職場のデスクで彼女のことを思い出しては、後悔と自…

解放

彼女のこととは無関係に、自分で自分を不幸にするようなことをしでかしてしまった。彼女の死について知らされた夜、誰も話せる相手がいなくて、つい例の男子にメールしてしまった。彼も彼女のことよく知ってるし。でも彼から返信はなかった。 ようやく悟った…

重さと軽さ

彼女は詩人だった。 比喩ではない。 彼女の選ぶ言葉は哲学的で、なおかつわたしたちの生活の音がしていて、 高校生の頃のわたしは、隣の席の女の子の寝顔を見ながら感歎するばかりだった。 お昼ごはんに、コンビニのわらびもちとかメロンパンとか食べてるよ…

卒業アルバムより

雪も降らず、海の気配もないここは空が8cmほど近いそうだ校旗が弱く恥ずかしげに垂れ下がる2時間目に少し笑った自転車のスタンドを上げる音や列車の走る音に時間の突き抜ける長さを感じた 経験が上から落ちてきて知識が下から突き上げる仕方がないので低血圧…

no title

高校時代の親友が亡くなった。 正確には、亡くなっていた。しかもパリで。6月に。 どうしてわたしの友人たちは、はかない人生を選ぶんだろう。 彼女がいなかったら今のわたしはいないのに、 わたしだけが生きていたってしょうがないじゃないか。 それでもい…

気持ちの整理

腹を据えて、戸塚さんのことを書く。 そもそものきっかけが、「ジュニアに堺雅人に似ている子がいる」だった。笑顔の奇行子がいると。そのころパリだったのでちょっと検索したら、エピソードだけでツボにはまったのが第一象限。その直後にデビューが決まり、…

フリダシにもどる

朝から夜まで本を読んでる。帰国前は、帰ってきたら貪るようにテレビ見る生活を想像してたんだけど、最初の3日くらいがピークで、あとはごはん以外黙々と読書してる。三毛猫もぼくでんくんも放っぽって。ずっと椅子生活だったので、座椅子に一日座ってると尾…

雨あがりの夜に

奈良の実家よりお送りしています。 故郷の一軒家で過ごす日本の6月は、湿度が高くて草の匂いが充満してて、慣れ親しんだ空気が肌に良くなじむ。昔は実家が嫌いだったけど、それは中高生のときの自分を思い出すからで、そこから随分遠くに来てしまった今では…

東へ

明日の朝、とうとう帰国します。 本当に幸せな一年だった。働くことの喜びも知ったし、美術館にも死ぬほど行ったし、フランス語もそれなりに話せるようになった。それでも思い残すことはたくさんあるけど、これは一時帰国のつもりなので、次のときまで心残り…

帰国準備

きのうの夕食は、オセアンヌのクラスメイトのご家族のリクエストで、日本料理を作って持って行った。巻き寿司と肉じゃが。でも失敗したんだよね。向こうの家族はモロッコ・アルジェリア系で、向こうのお宅でお鍋あっためてもらってるときに「この牛肉はハラ…

マティス展

静物画がこんなにおもしろいマティスって、やっぱり天才だと思うの。性的なセンセーショナルさじゃなく、絵画そのものとして心底楽しめるの久しぶりかもしれない。良い展覧会っていうのは、朝寝起きに飲む一杯の水みたいに、心身にしみわたるというか、頭が…

ドガとヌード展

縁のある画家とない画家っていうのはいて、ドガは不思議と縁がある。そもそもお姉ちゃんがドガ好きで部屋中に飾ってたので親近感があったし、2010年の横浜の大規模なドガ展も、心の余裕がある時期にじっくり観れた。逆に縁がないのはルドン。渋谷のルドン展…

ジヴェルニー

ナビ派の末っ子、モーリス・ドニの展覧会!! モネはそんな特別好きってわけじゃないけど、ドニの展覧会がジヴェルニーの印象派美術館で開催中というので、昨日初めてジヴェルニーに行ってきた。勝手知ったるサン・ラザール駅から電車で45分+バスで10分。パ…

夢日記

寝起きの頭で編集画面に直打ちする。ふだんはテキストエディットで下書きしてる。はてな、すぐに消えちゃうから。 わたしのミューズ(説明不要)の夢を見た。ちょっと今までにない感じの、壮大な夢だった。「好きなんだけど」って言って「じゃあ付き合おう」…

スリに遭った(たぶん)

財布がなくなった。あるもんだなー実際…。 いや、電車の中でスリが多いって話には聞いてたので、だいぶ気をつけてたつもりなんだけど、いつ盗られたのかまったく心あたりがない。というかその日めちゃくちゃ体調わるくてぐったりしてたんだよね帰り道。だか…