ドビュッシー展など


気持ちのベクトルが内に向かってる気がする。なんかあんまり人と話したくないし、自分の仕事だけやってあとはずっと本読んでたい。

行動が記録に追いつかないので、最近のことをまとめて書く。どんな形でも残さないよりはまし。


○3月12日(月) 『ドビュッシー、音楽と芸術 Debussy, la musique et les arts』展


 
パリに来てすぐぐらいのときにオランジュリー美術館行ったんだけど、そのときすでに働きすぎてて疲れてた記憶しかない。今回ひさしぶりにオランジュリー行ったら、自分のコンディションと天気が最高に良かったせいか、すっごい楽しめた。全身に酸素が行き渡るような感じ。オレンジ温室、ほんと酸素濃度高い。頭と心がリラックスしつつ完全に冴えてるような状態だった。(とはいえ、これを書いてる今はそうでもない。一週間前の話ね)
ドビュッシーが好きだった絵画や、彼と交友関係に会った画家たちの作品が一挙に集められた展覧会。今まであんまり知らなかったんだけど、ドビュッシーってドガとだいぶ仲良しだったらしい。ルロールという画家が友人に宛てた手紙で「火曜日にうちで食事をしませんか。ドガドビュッシーを誘って」とか書いてあって興奮した。気難しく見えるけどほんとはロリコンで、でもいつも陰から見てるだけのシャイボーイドガが、とにかく女の絶えない若いドビュッシーと仲良くしてるところとか想像するとわくわくする。そしてそのルロールの娘さんが二人いて、イヴォンヌちゃんとクリスティンヌちゃんっていうんだけど、どうやらドビュッシーはイヴォンヌちゃんが好きだったらしく、彼女のためにいくつか曲を捧げている(『忘れられた映像』など)。そのイヴォンヌちゃん姉妹は、ルロールパパ経由の付き合いで、ルノワールとかモーリス・ドニとかいろんな画家のモデルになってたため、今回の展覧会でしょっちゅう登場した。
前半はどっちかというと室内風景、後半は夜景とか海、景色などの屋外風景が多かった。そうだね、ドビュッシーって屋外のイメージ。それも海とか船とか霧とか、水気があってゆらゆら揺れるような風景が多い気が。そこへ来ると、ターナーはすごいしっくりなじむ。あとモネも水分多い系だし、ドビュッシー印象派というのは実際同時に鑑賞するとよくわかる。しいていえば、作曲家ドビュッシーの強みは、画家たちが描ききれない夜の匂いや風を描いたところだと思う。
6月まで開催中。もう一度行きたいけど、二回目って絶対に初回の感動を超えないんだよねー経験的に。どうしようかな。


エクリチュール

上の展覧会でドビュッシーとかドガの直筆を見て、わたしもフランス語の筆記体書けるようになりたい!って思って練習始めた。
「外国人は字が汚い」って思ってる人多いけど、フランス人に限ってはものすごい字がきれい。小さい頃に筆記体エクリチュール(きれいな字の書き方)を教えられるからだと思うんだけど。男の子でも、万年筆でカリグラフィー書けるよ、っていう子がいたりする。
わたしはふだん、ブロック体でフランス語書いてる。中学生のときに授業で筆記体習ったけど、フランス語の筆記体は英語とちょっと違う。なので実は今でも、街で手書き看板のメニュー見てもアルファベット自体読めなかったりする。そういうわけで、趣味と実用をかねて練習中。


○3月18日(月) サロン・ド・リーブル(本の展示会)

今年はジャポンパビリオンがあるっていうことで、学校にいっぱい案内が来てて、このポスターがすごい綺麗だったので行ってみた。パリで展示会といえばポルト・ドゥ・ベルサイユなんですけど、まあビックサイトですよ。ほんとあんまり変わらない。
しかしフランスの出版物は端正だね。美しいけどつまらない。つまらないけど美しい。日本の出版物は、感動的に美しいものと、許せないくらい汚いものと極端だと思う。しかし、きれいな装丁の本ばっかり並んだ広い会場のなかで、DNP丸善のブースはひどかった。丸善なんて、日本ではましなほうだと思うのに。
おもしろかったブースの1つ目。フランス文化省の、国内のステキな図書館建築集。模型とパネルと動画で紹介されてるんだけど、すごい全館まわりたくなった。南仏の河沿いに建てられた図書館で、窓際におっきなクッションがいっぱいあって、クッションに身体沈めたら目の前がもう水面、っていう建築がすごい良かった。そういえばパリの国立図書館にもまだ行ってない。入場料とる図書館がどれほどか見てきてやんなきゃ(あんち)
おもしろかったブース2つ目、「書物という宝物 Tresors de livres」。これはすばらしかった。というかこれは展示会内ギャラリーなんだけど(つまり買えるけど買えない値段ってこと)、昔の装飾本がガラスケースに入ってて、それはそれは見蕩れるほど美しかった。1ページ1ページ、扉も挿絵も活字も職人芸が生きていて、書物のエネルギーみたいなのがすごかった。なんかそれまで見てたフランスの新刊も、ぱっと見はきれいだけど、本に内包されるエネルギーがぜんっぜん違う。フランスの装丁芸術はもっと世界に誇っていいと思うよ!ほんとねえ、ずーっと見ていられる。新しいものは触らせてもらえるの。すごいドキドキして脈拍上がりすぎて、恋する女子状態だった。あらためて自分は古くて高級で美しくて手に入らない書物が好きなんだなあと思った。
最終的に、手製本の詩集と、開催中のドガ展の関連本と、クーリエの震災特集を購入して帰宅。