La femme du boulanger

[:W200]

フランスに来て初めて演劇を見に行った。人気のあるロングラン公演らしくて、主演のこの人が有名な俳優さんらしい。名前はミシェル・ガラブル。例の友人の男子に連れて行ってもらったんだけど、「フランス人はみんな彼が大好き!」って言ってた。植木等みたいな感じなのかな。


題名は『パン屋の妻』。南仏の田舎にあるパン屋のおじさんが、長年の一人やもめの末に若い奥さんをめとった。でもある日、その奥さんは羊飼いの男と一緒に駆け落ちしてしまう。パン屋のおじさんは悲しくて「もうパンを作りたくない!」っていうんだけど、村中の人たちが「困るよ!パン作って!」っていうお話。


って概要だけ先に聞いてたんだけど、いやー全然わかんなかった。90%くらいわかんない。群衆劇なので5人か6人くらいが入れ替わり立ち替わり舞台上にいて、それぞれの役がなんなのかすらわかんなかった。友人がその都度翻訳してくれるんだけど(フランスの舞台は公演中におしゃべりしても大丈夫)、舞台上の会話が早すぎて全然追いつけなかった。まわりがすごい笑ってるんだけど、なんで笑ってるのかがわかんなくて淋しかったなあ。


終わってから友人を質問攻めにして、ようやくちょっと理解できた。まず、登場人物がパン屋、カフェの主人、村の教会の司祭、小学校の教師、近くの城に住む侯爵、羊飼い、っていうのがほんとにフランスの典型的な田舎らしい。もうそれは記号みたいなもので、日本の能だと、女、老人、法師、鬼、などなど種類がある程度決まってるのとちょっと似てるのかもしれない。そして、台詞のなかでパンの話をしてるんだけど、俗語として「寝取られた男」って意味があったりとか(なんていう単語だったのか忘れた)、ダブルミーニングになってる台詞がたくさんあったらしい。だから笑ってたんだよ、って教えられた。それから「羊飼いに誘惑された」というのも、カトリックでは羊飼いは「誘導する者」という意味があるそうで、それをふまえての羊飼いだそう。
こういうのが、千野栄一氏のいうところのレアリアってやつなんだろうな。言葉だけじゃなくて、文化とか歴史とかを知らないと、原作者が作品に込めた暗喩とかおちゃめなトリックにも気づけないんだなあと実感。


翌日、さっそく原作を買いに行った。マルセル・パニョールの同名の脚本で、1938年に映画化されたときのものらしい。だから今回の舞台とは細かく設定が違ってたけど、舞台は一幕ものだから、舞台にはなかったシーン、例えば司祭が若い奥さんを説得しに小さい島に行ったシーンとかあって、だいぶ補完できた。でも原作読んでわかった、どうやら聞き取れなかったんじゃなくて、聞き取れても全然単語を知らなかった模様。もっと勉強しようね自分。

LA Femme Du Boulanger

LA Femme Du Boulanger


さて明日は嵐ヲタパリジェンヌちゃんとのお食事会、明後日はサーカス!!