オランジュリー美術館

チュイルリー公園の一角にある、オランジュリー美術館に行ってきました。いやー良かった。モネの睡蓮の間が有名だけど、あれはもう絵じゃない。インスタレーションだわ。楕円形の白い部屋に天井からやわらかい日差しが降り注いで、東西南北を睡蓮に囲まれるというインスタレーション。まるで温室みたいだった。


…って思ってたら、美術館になる前はほんとに温室だったんだね!オレンジの温室だったからオランジュリーなのか。


モネの言葉。館内案内より

  労働で疲れきった人々の神経が、私の絵の中の水のように穏やかになり、花の咲き乱れるアクアリウムの中で穏やかに思索に耽る場となるでしょう。

まあ観光客が多いので、思索に耽るのは難しいけど。ひとりだったらいいのにな。椅子と温かいお茶持ってきて、本読んだりぼーっとしたりしたい。


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オランジュリー美術館の常設展は、ジャン・ヴァルテールとポール・ギョームという画商のコレクションが中心。作品数は少ないけど、静かに印象派見るならいい美術館だと思う。でもわたし、これまでオランジュリーにあんまり興味なかったのって、この絵で有名だったからなんだよね…。


アンドレ・ドランの『アルルカンとピエロ』。なんかさ、こわくない?印象派っていってもいろいろで、モネとかルノワールとかぼんやり系と、ドランやルソーのくっきり系とがあって、このくっきり系がほんとにこわくて苦手。後のシュールレアリスムにつながるような、リアルな気持ちわるさがある。かといってルノワールもあんまり好きじゃないけど。銀座のおばさまの香水の匂いがする。ローランサンは青山のおばさまの香水の匂い。


マティスピカソの部屋がすごい良かったな。マティスは、ポンピドゥーではフォーヴィスムの作品ばかりしか見れないんだけど、ここではその後南仏に渡ってからの明るくて色彩豊かな絵がたくさん見られる。これとか、生で見てすごい好みど真ん中だった。『赤いキュロットのオダリスク』。


知り合いの方が送ってくださった集英社の月間小冊子の中で、長谷川祐子氏がこう言ってた。「私たちは、生まれ育ってきた文化、情報環境の蓄積と直観や感性を総合して、対象の意味をとらえる。(中略)世界的に見てこのロスがもっとも少ないのがヨーロッパ印象派絵画といえる」そのため非欧米圏の国々でもまんべんなく愛好されているのだろうと。なるほど、確かに。だから、印象派って知覚全部使って観る身体体験って感じがするんだろうな。ある部屋ではジヴェルニーで睡蓮を見ているような気持ちになって、ある部屋では南仏でだらだら寝そべってる気分になる。あー南仏行きたいな。