古い港のミステリー

フランス語の本を、初めて辞書なしで一冊読めた。


Mystere sur le Vieux-Port


アシェットのフランス語学習者用のシリーズ。ジョエルがアリアンス・フランセーズの図書館で借りてきてくれた。ほんとは読みたい本がたくさんあるから、なんでもかんでも読んでる暇はないんだけど、せっかくわたしのために選んでくれたので空き時間にちょっとずつ読んでみた。そしたらすごいおもしろかったっていう。


マルセイユが舞台で、アルゼンチン人の画家の青年が二人の男に突然連れ去られるっていう事件が起こる。その青年は連れ去られるまぎわに携帯電話を近くにいた少女に託した。困惑したその少女は、彼の友人で詩人のおじいちゃんと出会い、なぜ彼が連れ去られたのか、彼はどこにいるのか、一緒に謎を解明するためにマルセイユ中を歩く。一方の青年は、港に停泊してる船に監禁されて、彼らがドガの『コーラス隊』の絵を美術館から盗む現場を、自分がたまたま撮影しまったために連れ去られたことを知らされる。でもこの事件の首謀者である女性の言葉にはっとする。「美術館で絵画に興味のない旅行者たちに見られているよりも、本当にその絵を愛してる人の手元で大切にされるほうが、作品にとっても幸せでしょう?」


というようなストーリーが、初級レベルの単語だけで30ページくらいで書かれている。いや、その割に深かった。ミステリーでもあるし、芸術の所有という問題にも触れてるし、知ってる駅名とか名所がたくさん出てきてマルセイユ歩いてるような気分にもなるし、読んでてだんだん楽しくなってきた。何より、辞書使わずに純粋に読めたことが嬉しかった。


自分で日本語教えてても思うことだけど、言葉ができないからって考え方まで幼稚なわけじゃない。初級ならこのくらいしかわからないだろう、って考えるのは違うと思う。初級の外国語でも、上手に導けば母国語でふるまうのと同じようにできるはず。少なくともわたしは、この本を作った人たちはフランス語学習者をとても尊重してる感じがした。この「尊重されてる感じ」を大事にするっていうのは、結構何にでも応用できる気がする。