研修中

今週から、日本語の授業を1日1時間受け持ちながら、語学教師としての育成研修が始まったんだけど、この研修がものすごいレベル高くてちょう大変。始まった瞬間、やばいと思った。フランス人の語学教育メソッドまじですごい。

「説明をすること、意味を教えること、理解させること。これらは真の教育ではありません。生徒が知識を身につけることで自由にふるまえ、自分自身で物事を指し示し、解決し、実行できるように差し向けることが、私たちのすべきことです」

「教師が“教師役”を演じてそれを見せるのではなく、生徒たちをこちら側に招き入れて表現させ、共にひとつのスペクタクルを作り上げるのです」

「台詞を書いた脚本は必要ありません。その代わりに、授業ごとの学習目標・生徒たちが自ら発見すべき気づき・生徒たちの理解度の確認などを交えたマトリクスを作ります。生徒の反応を生かしながら展開していく私たちの授業では、このほうが柔軟性が高いでしょう?」

こんな感じ。隣で一緒に研修を受けているフランス人の男の子が、「ムズカシイ…」ってこぼしてた。君が難しいとか言ってたらわたしとかどうするの。


正直、授業中は40%くらいしか理解してない。目も耳も全開にして聞いてるけど、与えられてるレジュメの単語がわからないので、後から辞書引いてやっと理解できる感じ。自分が受け持つ授業の準備もしつつ、研修の復習と次の日までの課題をやってるとかなりキツい。受験勉強と定期テストの勉強を同時にやってる高校生みたいな気分。


でも、この研修自体が良い授業のお手本みたいな感じなの。最初フリートークしてたかと思うと、自然と本題に導入されていって、しょっちゅう「あなたはどう思う?」「このやり方のメリットとデメリットは?」とかってたずねられる。そして何を言っても絶対に否定されない。「そうですね。あなたの指摘した通り…」って言いつつ、気づいたら彼らの理論に繋がっているっていう。講師の男性は優しくておちゃめなおじさんで、笑えるところも作りつつ、大事なところはジョブスばりの説得力で言い切る。こういうふうに、緩急つけながら最終的に自分の言いたいことをいう話し方って、フランス人みんな上手なんだよねえ。アメリカ人がスピーチで人心を掌握していくとしたら、フランス人は対話で相手を自分の懐に入れていく。フランスは伝統的にレトリックで政治を動かしてきた人たちの国だからね。外交のニュース見てても、交渉ごとの見事さったらない。


たぶん日本で日本語教師の教育受けるのと、全然違うんだろうねえ。でも今教わってることって、人間相手の職業なら何にでも応用できる気がする。「即興芝居の基本は『イエス、アンド』である。『そう、それでね…』と受け入れながら物語をつむいでいくのだ」って言葉を思い出した。うん確かに、授業って即興芝居みたいなものかも。