ブローニュの森

わたしの知ってる森の音とはちがう、硬質な静けさ。
もし君にこの景色を見せてあげることができたら、どんなふうに思っただろう。




大切な友人を亡くした喪失感は、きっと一生他のものでは埋まらないと思う。君が占めていた場所に永遠に空洞を抱えたまま、わたしたちは毎日笑って生きていかなければならないんだ。誰も君の代わりなんてできない。


今でもわたしは、自分よりも君のほうが生きるべき人間だったと思ってる。命の輝きのまぶしさがちがいすぎる。だけど君の未来は途中でとぎれてしまったから、その灯りを少しだけ受け継いだ。君が見ようとしていたもの、君がわたしに教えてくれようとしていたもの、君がわたしに期待してくれていたことを、君のいない世界でわたしは見つけていかなければいけないと思った。そして君がわたしをこの街まで連れて来てくれた。


ポンピドゥーセンターの2階から広場を見下ろすたびに、あの日ここで偶然出会ったときのことを思い出す。毎日毎日思い出して、また図書館に戻って、勉強を再開する。もしもう一度会って話をすることができたら、あの頃よりもう少し先輩らしく、君と語り合うことができるように。