鳥籠

わたしに詩を書く動機をくれる、唯一の男の子。それは自分に彼氏がいるときもいないときも絶対にその子ただひとりで、たぶん人生最初で最後の存在。抽象化された「恋」の象徴。わたしの心の中に住む永遠のミューズ。



二人きりで会ったのは、高校卒業して以来今日が初めてだった。すごい緊張してほとんど顔を見れなかったので、今思い出しても蘇るのは、その子の靴の様子ばかり。会わなかった間、自分のなかで思いだけが昇華されないまま増幅されてるのかと思ってた。でも実際会ってみたら、相変わらず優しくて繊細で、わたしの好きな声でとても絶妙な言葉の選び方をするから、この子に出会ってしまった高校生のわたしは本当に可哀想だなあ…ってしみじみ思った。


おそらくわたしはこの子にとらわれて一生生きていくんだと思う。それはもう随分前に悟った。悟って諦めた。身体はいろんな土地に移動しながらも、精神は鳥籠の中にずっと閉じ込められている。誰の意志からも独立して自由でいたいと思う一方で、この子の支配下に置かれて永遠にこの小さな世界から出られない、という甘美な夢から醒めたくなくて、わたしはこれからもきっとこの不自由さという恍惚から抜け出せないんだろう。そして、あの子もそれをわかってる。わかってるけどどうしようもないから、慈悲のような気持ちで会ってくれたんだと思う。あの子にとっても、たぶんわたしは特別だ。わたしほどあの子を愛してる人間はいないから。




「一年後にわたしが帰ってきたとき、君が結婚してたらどうしよう」
「結婚して離婚してたりして」
そしたらわたしがもらってあげるよ、とは言えない。




結局この13年間で、手を握ったことも身体に触ったことすらない。わたしのあの子に対する感情は恋心だとは言ったけど、崇拝でもあるし共鳴でもあるし、わたしにとって性的な対象にはなりえない。まるで男性が処女の女性を大事にしているような心境。ある意味聖体のようなあの子の身体。それが近くにあったことが最後まで信じられなくて、別れ際に「本当に元気でね。病気しないで、死なないで、ただ生きててくれたらそれでいい」って言った。書いてみたら随分大袈裟でちょっと笑えるけど、究極、本気で大事な相手にはそれしかないんだなあって思った。


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夜中のテンションで書いてるから、明日になって読み直すのこわいな…