マイルストーン

今27歳の人には絶対聴いてほしい。斉藤和義の名曲、『いたいけな秋』。


去年の年末、初めて聴いて吐きそうなくらい感動した。「ブランアン・ジョーンズ、27。ジミ・ヘンドリックス、27。カート・コバーン、27。ジャニス・ジョップリン、27…」 ロックに疎いわたしでも、うすうす感づく。極めつけは、「ジョン・レノン、40。」ぞわっとした。




20代中盤すぎたあたりで、自分は大人になったら成長するって思ってるのは幻想なんだなあって気づいた。年下でもすごく人間ができてる友だちはいるし、年上でも尊敬できない人はいる。そしてわたし自身が想像していた大人になってないなあって思った時点から、いま出来ないことはいつかエスカレーター式に出来るようになったりはしない、って強烈に意識するようになった。


27歳になってからは、10年前にいる堺さんのことを考えるようになった。というのも、いま観られる堺さんの映像がだいたい27歳くらいからのものばかりだから。10年先のロールモデルであると同時に、27歳から先は10年前の堺さんと自分を比べることができるんだって思って、ちょっと特別な気持ちだった。まあ堺さんに限らないんだけど、22歳のときにBUMPの天体観測だとか、25歳でデュシャンは『階段を降りる裸体No.2』を描いたとか、GLAYpure soulTAKUROさん25歳のときだとか、自分の年のときにあのひとはどうしていただろうって結構その都度考えていた。考えた結果、こんなんじゃだめだ自分!って思いたかったのかもしれない。でも、自分の人生を他人の歴史に重ねるのなんて意味ないよなあっていうひっかかりはずっとあって。そんなの気にしなくていいのにって思いながらも気にしてしまう葛藤がいつもあった。


そのひっかかりを隠すことなくそのまま歌にしてしまったのが、いたいけな秋だった。衝撃だったよね。自分でなんとなく否定していた自分の思考を、まんま歌にして差し出されたわけだから。


それで冒頭の「ブランアン・ジョーンズ、27。ジミ・ヘンドリックス、27…」に戻る。その続きはこう。


  届くのか?届いたのか?追いついたか?イヤ気のせいか?
  間に合うか?追い抜いたのか?そんな訳ねえか?もう遅いのか?


わたしはまさに27歳でこれを聴いてしまって、あまりの奇跡のようなタイミングに震えたけど、はっきりいってこんなに嫌な歌は他に存在しない 笑。反則だよこれ。



今日、その27歳をすぎて、28歳になった。有難いことに自殺もせず大きな病気もしないでここまで生きてきた。わたしがマイルストーンみたいに目標にしていた27歳を通過しても、この先まだまだ人生は続くということだ。昔は未来がまったく見えてなかった、というか真剣に見ようとしてなかったから、もっと無敵だったかもしれない。10年先の自分も20年先の自分も今の自分が面倒みてあげなきゃいけないって知った今のほうが、恐怖心が芽生えてまっとうに不安な気持ちになってる気がする。

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今年はすごいたくさんの人たちにお祝いのメッセージをもらった。すごく嬉しかった。「素敵な一年にしてね」って自分もよくいうけど、今年は本当に大事に過ごさなきゃいけないなって思ってる。先週友だちにもらった白いチューリップが、花びらを落としそうになりながら今日も部屋の真ん中で揺れてる。