ジョーカーメイキング

昨日いろんな情報*1に踊らされて不安定になってた気持ちが、一日の最後にあのメイキング見て、コトコトとニュートラルに戻る気がした。堺さんがとにかくいきいきと楽しそうで、ああ、こうやってあのひとは毎日やってるんだなあってしみじみ思って。雑誌のインタビューとか舞台挨拶とか、スポークスマンとして外向きにしゃべるのばかり最近見てたから、そのそつのなさに慣れてしまってたかもしれない。それに、ツレうつですごい痩せて生気のない堺さんを見てしまったのもあって、ちょっと神経が過敏になってたのかもしれない。ひさしぶりに現場でのびのびしてる堺さんを見て心身ともに全力で和んだ。なんだろう、例えは変だけど、心がざわざわしてるときにふだんの食事を真剣に作ると、少し気持ちが落ち着くのに似てる。すごく表情豊かに笑う堺さんを見れた安心感を、受け手の自分側で勝手に増幅させているような…。伝わらないなきっと。





相変わらず言葉のチョイスがおもしろい。「力強いストライド走法を」とか「いいですねー今の、香港映画のような」とか。言葉、声、顔の順にほれていくのはまわりのほうです。


予想してたのと違ったのは、本を読んでる映像がひとつもなかったところ。去年の夏に、日経マガジンで「撮影現場では、声をかけたり笑わせたりしてスタッフや共演者を気遣う堺」みたいな描写があって、そのときも意外だなあって思ったんだけど、ジョーカーの現場ではほんとにムードメーカーだったんだね。あのひといつもと変わらないように見えたけど、一応「ぼく、ざちょうだから!」って意識してたのかな。


でもメイキングってふつう、演技している以外の時間に何をしてるかっていうのがもっと多い気がする(あらしのいちゃいちゃを見慣れたせいかもしれない 笑)。だけどジョーカーはほんとにmakingで、どうやってあの演出になったのかを見るようなものだった。


たとえば、「アイスの当たりが出たから引き換えてくるー」のシーン。(こう書くとめちゃくちゃかわいいな…)いろんな芝居を試して、スキップしたりアイスの棒にちゅーしたり、いろいろやってみた結果、本番は渋い感じでまとめてきた。「何が伝わるんだろう…」とかいいながらこだわるこだわる。でもメイキングでここまでたくさん、リハーサル/テスト/本番って声を聞くことってない気がする。


それから「だから俺には三上さんの考えが染み付いてる」のくだり。わたし、このメイキングのなかでここが一番好きかもしれない。「何か腑に落ちない様子の堺」っていうのが。論理だけじゃなく、伊達さんとしての感覚として、もしくは言葉を扱う人間の役割として当然と思ってるのかもしれないけど、不自然だと思ったら疑問を飲み込まないで意見をいう。口だけじゃなくて、自分からアイデアを出して試して見てもらう。これって実はデザイナーに近い作業。


堺さんが現場にいると良いんだろうな。一緒に試行錯誤して深く掘り下げられるわりに、深刻な雰囲気にならない。いちいち細かく指示しなくても、自分から考えて動いてくれる。その追究の仕方がまた正確。素直だし、真面目だし、何より本人がいちばん楽しそう。重宝されるわけだよ。見てるとけっこうしょっちゅう暑いとか寒いとかいらいらするとかいってるけど、堺さんがいうとなーんか楽しそうなんだよね。そういえば情熱大陸見てさ、あのとき「このひとは年を追うごとに正直になっていく…」って思って感動したんだけど(ふてぶてしくなってるともいう^^)、若さ特有の頑なさがなくなってきて、どんどん柔らかくなってきてるんだよね。老成しながら赤ちゃんに戻ろうとしてる感じ。あかちゃんかきみは!


堺さんって、自己肯定力がすごく強い人だと思う。それは、「僕がやることだからきっと正しい」っていう自信じゃなくて、「僕のやってることが正しいかどうかはわからない。でも自分で考えて最善を尽くしたことだから、結果まちがっていてもそれも自分だ」っていう自己肯定。そういう人だから、初めてうつっていう病について考えたときも「うつを受け入れる―6割ぐらいの満足度でうまくやっていく、ということが実はすごくリアルなんじゃないか」っていえるんだと思う。6割くらいの満足度…わたしはかなり自分にも他人にも甘い人間だと思うけど、6割って低いよなあ。それでもいいよ、っていってくれる伴侶がいたら、わたしだって安心して不安になりたい 笑





文筆業がいちばん好き*2、とかいってごめん。やっぱりお芝居してる堺さんがいちばん好きです。

*1:あいばイケメンanan、あらしau60パターン、ツレうつ記者発表

*2:http://d.hatena.ne.jp/orpheuse/20090920