ドガ展


ドガといえば少女で踊り子でチュールいっぱいパステルカラー、なイメージが強いと思うのですが、ドガってもっと斬新でモダンな人だと思う。わたしの思うドガは、画家というより写真家に近い。画面の切り取り方がパツン、としてて唐突だったりするし、黒とか影の使い方が洗練されてる。実際、1890年代の時点ですでに自前の写真機で撮り始めてたそう。


印象派展イヤーだった2010年。そのなかでも大阪のサントリーミュージアム天保山の展示がすごく良かったんだけど(まあわたしのコンディションもその都度大いに影響してると思いますが)、そのときにドガの絵で惚れたのが、この絵だった。それが今回のドガ展でも展示されてて、見た瞬間ちょうハイテンションで「ねえちょっとあれすごいかっこよくない!」って、それこそモンスターでさとしが仰々しく登場するときくらい狂喜して、同行者の袖をひっぱりつつこの絵の前でしゃべりたおしたわたし。これ、ほんとにこういうトリミングなの。かっこいい。


ドガの作品をまとめて観たのって案外これが初めてだった。どこで完成とするかの基準が、ひとりの人間とは思えないほどまちまちだったのが不思議で興味深かった。デッサンと習作と最終完成形の差が曖昧で、ある作品では制作中みたいにラフな筆致なのに、ある作品では神経質なまでに細密に描きこんでて表面処理もきれいだし。モチーフはある程度絞られているのに、出来上がりのクオリティがあんなに不揃いな画家は見たことがない。


そのなかでも、今回のメインビジュアルに使われていたエトワールは、やっぱりすごい特別な完成度だった。うん、その部屋に入ったとき、ちょっとびっくりしたもの。


ドガ印象派の画家たちのなかでも、特別インドアな画風。でもドガが踊り子たちをパステルで描き出したあたりからいきいきしだしたのがわかる。たとえていうなら、アマナ用のイメージ写真ばっかり撮っていたカメラマンが、歌舞伎役者の舞台裏を撮り始めたような感じ。舞台上で輝いている人間の華やかさと、その代償の暗さとか物悲しさ、っていう対比のモチーフが好きなんだろうなあって思った。モネが自然の光と影を描いたとしたら、ドガは人間の光と影を描いた。


あと彼はきっと、関節フェチ。ひじとひざとくるぶし部分だけのデッサンが大量にあっておもしろかった。ドガはこういうむっつりなところが日本人に受けたんじゃないかと思う。


ドガ展
会期:2010年9月18日〜12月31日
会場:横浜美術館


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これは年末に観に行ったときのメモ。あとでカンディンスキーも上げます。