ma donna


高校時代の女友達が結婚することになった。


当時のわたしは友達にも距離をとってたというか、本音をうまく言葉にすることが苦手だったから、誰とでも仲良くできるけど結局誰とも仲良くない、みたいな感じだった。でも彼女はいつも優しくて可愛くて、「あっちゃんのことわたしすきだよー」ってまるでマリア様のように無償の愛でわたしのことを包んでくれてたので、わたしも彼女のことが大好きだった。そういえば聖母マリアってフランス語だと「ノートルダム」、イタリア語だと「マドンナ」だよね。(ただし彼女の実家は飛鳥時代から続くお寺)


そう、彼女はma donnaなのだった。すべての人を愛し、すべての人から愛されるような女の子。ここから本題、わたしの好きな人が彼女を好きだったのでした。それはわたししか知らなかったし、告るとかそういう選択肢をまったく考えない男子だったので、彼もわたしもこの件に関しては何事もなく高校生活は終わった。


25すぎたあたりから、彼がいつか誰かと結婚するかもしれない覚悟はしとこうと思ってた。でも今日「わたし結婚するんだ!」ってその友達から連絡もらって、すぐに考えたのがその子のことだった。残念がるだろうな、教えてあげないほうがいいかなって最初は軽く思ったけど、自分に置き換えて想像してみたらだんだんつらくなってきて、いまようやく彼女が結婚することの意味が脳に到達した。好きな人が結婚するよりも、好きな人の好きだった人(しかも気持ちを伝えられなかった人)が結婚することのほうがつらいんだな。


彼女の結婚式にその子は来るのかな。そしたらわたし、ごめんだけどその場にいられない。