身体に毒が


わたしは何かに興味を持つと、シナプスのように触手を広げてしまう傾向があります。
これはムサシから派生。


藤原竜也×白石加代子 身毒丸 復活 [DVD]

藤原竜也×白石加代子 身毒丸 復活 [DVD]



なんというか…凄かった。そして怖かった。
凄い、は藤原竜也へ。怖い、は白石加代子へ。
とにかく言葉にならない圧倒的な激しさ。



97年の初演時、藤原竜也がすごい話題になってたのを今でもよく覚えている。
身毒丸のドキュメンタリーを見て、同い年の少年のあの屈託なさと狂気の表現に
すっごく興味を持った。
でも自分もまだ中学生だったから舞台なんて観に行けず。
それから12年。12年越しの身毒丸。ようやくこちらの観る体勢が整った。
でもまったく無防備な状態で放り込まれた初舞台がこれって…
蜷川さんの言葉を借りると、藤原竜也にとったら疑う余地もないほど「最悪だ」よなぁ。
でも中途半端ではなく行き過ぎているから、可哀想とも思わない。
芸術作品としては大変な完成度。



とにかく、熱い。煮えたぎるような熱さが全編にわたって続いていて、
何が起こっているのかわからないうちに、意識が巻き込まれていく。
一瞬たりとも観客を休ませてくれない演出。
そして限界まで感情を酷使する役者たち。
藤原竜也は「この舞台は苦しくて疲れる」っていってた。
「疲れる」と「憑かれる」は同じ語源というけれど、
藤原竜也の憑かれようは尋常じゃない。
言い方があからさますぎるかもしれないけど、でも言うけど、
薬を飲まされて犯されながら幻覚を見ている少年みたいだ。
(しかし特典映像のオーディション時の藤原竜也はすっごいピュアでかわいい)



そして、白石加代子が本当に怖い!
「夜叉」っていう言葉が頭に浮かぶ。
もう少し美しい人を選べば、画としてもっと落ち着くのに、
あの妖怪のように恐ろしい顔でなまめかしい女の声を出すから、
本当に背筋が凍る。



想像では、もっと愛情のある近親相姦かと思ってた。
でも実際観たら、しんとく丸は本気で恐怖を抱いて拒絶してるように描かれている。
撫子も、憎悪っていう魔物に蝕まれて狂っていくように見えた。
あれは愛じゃない。
自分を憎む美少年、その子を傷つけたい欲望が破裂してしまったんだろう。



いや、ストーリーとか役者とかはどうでもいい。
あの濃度の濃い九十分にあてられたことだけ書き残しておこう。
DVDで観ただけで熱が出そうだよ。蜷川幸雄凄いな。
ムサシよりこっちのほうが舞台で観たかった。



あーでも蜷川作品に足を踏み込んだらお金がかかるよなあ絶対。わかってる。
わかってるけど、カリギュラが観たい。