武蔵国でムサシを観る
引き続き欲望のままに過ごす一日。
代休をとってこれを観に行ってきました。
M U S A S H I
作:井上ひさし 演出:蜷川幸雄
藤原竜也/小栗旬/鈴木杏/吉田鋼太郎/辻萬長/白石加代子
於・彩の国さいたま芸術劇場
おぐりん瑞々しいな!なんだろうあのジューシーな立ち居振る舞いは。
おぐりしゅんを観たくてがんばってチケットとって観に行ってきたわけですが。
すっごく舞台映えする身体(いやむしろ「肢体」と表現しよう)なのね。
武蔵の藤原竜也も背が高いはずなんだけど、小次郎のほうがのびのびして見えた。
お話は、巌流島の戦いのあと、小次郎は生きていた。というところから始まります。
幻想的な舞台美術と壮麗な音楽。
そういえば最近ラーメンズのミニマルな舞台しか観てなかったから、
あらためてお芝居だあ…って感動した。
そして、ムサシと小次郎が再会し、決闘を果たすまでの三日間を描く…
んだけれど。
井上ひさし×蜷川幸雄っていう「巨匠」と呼ばれる大御所二人だから、
もっと凝った仕掛けのお芝居なのかと思いきや、あんなに軽いのね!?
笑いがふんだんで、俗っぽいというか大衆的。
五人六脚とか、それをやりたいためにストーリー組み立てているようにすら思える。
けどおもしろいんだけどさ。
特にベテラン俳優陣のコメディアンっぷりが秀逸。
この舞台で一番おいしかったのは白石加代子だと思う。
「ムサシ」ってタイトルだけど、武蔵と小次郎の話ではないんだよね。
どちらかというと群衆劇。(ただし計画的な。後に判明する)
わたしは役者を観に行った不純な観客だから、
ほんとは「藤原竜也×小栗旬」をたくさん観たかったけど、
あの中にいると二人ともヒヨッコすぎて、「がんばってる末っ子二人」にしか見えない。
それが微笑ましいんだけど。
けれど、藤原竜也と小栗旬の配役は
すっごい自然なんだけど蜷川先生の策略を感じるね。
無策・無計画・無頓着な武蔵には無邪気な藤原竜也。
いつも二番手で優等生的・負けず嫌いな小次郎には小栗旬。
小栗旬に「お前を舞台の上で藤原竜也と比べてやる」っていってるように見える。
そうして小栗旬が奮起するのをおもしろがってるんだろう。
藤原竜也は、自由にしてるだけで愛されちゃう子だからねぇ。新選組のときみたいに。
あ、今度新選組やってほしい!
近藤勇→藤原竜也、土方歳三→小栗旬で。
復讐の連鎖、捨てきれない欲望に翻弄される人間、
そういうテーマもあったんだろうけれど、
それをあんまり声高に言わないでいてくれて良かったと思う。
本当に心を動かされるのは、鈴木杏ちゃんの仇討ちに
なんだかんだいって協力してしまう武蔵と小次郎の様子だ。
人間の愚かさなんて、みんな嫌になるほど知っている。
それを克服する以前に、つい情に流されて、
つい一緒に剣術の練習をしちゃう二人が、とても人間的であったかい。
会話じゃなくて状況が「あーしかたねぇなあ!」って人を動かす瞬間って
お芝居でも現実でもおもしろいよね。
でもこういう感情の機微を作り出す設定って難しいよね。
そのせいか、ラストに若干の不完全燃焼感が…。
以下、わたしの今日一番のツボ。
・武蔵にこの場で決闘を挑まれて小次郎が額に巻いた鉢巻きの白さ
なんだかすごい清潔感にあふれかえっていましたよ。