解放

彼女のこととは無関係に、自分で自分を不幸にするようなことをしでかしてしまった。彼女の死について知らされた夜、誰も話せる相手がいなくて、つい例の男子にメールしてしまった。彼も彼女のことよく知ってるし。でも彼から返信はなかった。
ようやく悟った。ああこの人は、どんなに待っててもわたしの一番つらいときに助けてくれたりはしないだろうなって。




わたしがあの子に囚われている理由は、わたしにとって特別素敵な子だからっていうのもあるけど、もうひとつ、自分が最も嫌な人間であった時期のわたしを知っているからっていうのがあるんだと思う。自分の汚い部分まで知られているということが、離れられない理由になる。一種のマゾヒスムかもしれない。


でも自らむざむざと傷つきにいく必要はないんだろう、冷静に考えれば。今のわたしは、高校生のときのようには振る舞わない。なんのために自分が大人になったかということだ。過去の自分のみじめさを認めないで、無理やり美しい思い出に脳内変換するよりは、今幸せだと思えることひとつひとつを大事にするべきだと思う。大切な人には会いにいくとか、自分のやりたいことをまっとうするとか。そんな簡単なことが、当時のわたしにはできなかった。


本当に、人生の半分近くあの子のことばっかり考えてたけど。もう解放されてもいいかなって思うようになった。あの子が恋人ができたらどうしようとか結婚したらどうしようとか考えてたりもしたけど、究極、元気で生きてくれたらそれでいいと思う。わたしはたぶん、あの子なしでももう生きていける。